ROHKA 2006 S/S 展示会レポート
取材に至るまでの経緯
2005年9月26日、ミラノの Via Savona 54 にて、ローカ(ROHKA)の 2006 S/S 展示会が催された。この展示会は、ミラノコレクション期間中に行われたものである。
今回、筆者はミラノコレクション期間中にミラノに滞在する機会に恵まれたので、以前から気になっていた、ローカの展示会に足を運んでみることにした。
このような展示会は通常、一般の人には公開されていない。そこで、ローカの公式サイトでプレスの連絡先を調べて、ファッションサイト管理者が取材をさせていただくという名目で、事前にアポイントをとり、ニールバレットの展示会に寄った後、約束通り 26日 16:00 に会場に到着した。
会場は C.P. COMPANY のショールームに併設されており、14:00 から 16:30 までの開催ということで、筆者が会場に到着した時には既に展示会が開催されていた。
展示会の様子
展示会は、地下駐車場のような会場で、部屋の中央部分にベンチが並べられ、そのベンチにモデルが座っていたり、立って会場内を歩いたりして服を見せる、という形式であった。また、壁面の左右には大きなディスプレイが設置されており、展示会のコンセプトビデオがエンドレスで流されていた。
来訪者はモデルに近寄って、服を観たり服に触れたり写真撮影をしたりすることが許されており、服を観るには申し分のない状況がしっかりと確保されていたところが好印象であった。
(展示会場の様子は右の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)
展示会場で流されていたコンセプトビデオはニコラ・ペッレグリーニ(Nicola PELLEGRINI)とオットネラ・モセリン(Ottonella MOCELLIN)によるもので、タイトルは「私の人生の旅路に貴方を引き連れても良いですか(MAY I TAKE YOU DOWN THE CORRIDORS OF MY LIFE)」というものである。左側に設置されたディスプレイには、ニコラ・ペッレグリーニ氏本人が、時折自らスカートを捲り上げながら街中を練り歩く動画が映し出され、右側に設置されたディスプレイには、ニコラ・ペッレグリーニ氏本人の目線から、街中の様子を撮影した動画が映し出されていた。
街中を歩く女性と、その女性自身の目線からの 2通りの動画を左右で映し出すという手法がユニークで、スカートを捲り上げながら歩く様が、展示会の非日常性を反映しているようで、なかなかにコンセプチュアルな印象であった。
(コンセプトビデオの様子は左の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)
展示アイテムは、凝ったパターンやテキスタイルの服はあまり多く観られず、あくまでもナチュラル且つシンプルで可愛らしいものが多い。アイテムに合わせて、モデルも自然で親近感の湧きやすい、日常的な印象の娘が多かった。使用されている素材も薄く軽い綿や絹を基調とした物が多く、淡い色をベースに水玉やプリントを施した、ソフトな生地使いであった。
また、特に印象に残ったのは、ドレスの胸部やスカートの前部に施されていた、紐を用いて生地を手繰り寄せることにより作り出された、華のモチーフである。非常に緻密な計算に基づいて作られたモチーフには、思わず見とれてしまったほど。それでも、日常着として用いるのには凝り過ぎていない、さり気ないディテールの拘りであると感じた。
右の写真の女性のスカートの前部に施されているのが、上記に記した華のモチーフなのであるが、おわかりいただけるであろうか。
(アイテムの様子は右の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)
デザイナーインタビュー
「我々が常に意識していることは、ディファレントである、ということです。」
筆者が今回の展示会のコンセプトについてデザイナーの1人であるイアン・フィン氏(デザインパートナーはマリア・レストレポ)に尋ねると、開口一番、上記のように彼は答えた。今回のような展示形式を採用したのも、他のブランドと異なる、ということを意識したからなのだそうだ。
そして、彼は以下のように続けた。
「コンセプトビデオの女性がスカートを捲るシーンがありますが、それも、ディファレントであることを象徴しています。ただし、あくまでもこれは、セクシーなイメージではなく、イノセントなイメージです。我々はいつも日常的なリアルクローズを作ることを心掛けています。例えば仕事をしていても、街を歩いていても、自転車に乗っていても、服を気にせずに着られることが大事です。リラックスできて、イージーに着られて、そしてフリーであること。これが重要なのです。だから、フェミニンであることはあっても、セクシーであることはなく、あくまでもイノセントなイメージなのです。」
にこやかで優しげな風貌の男性が、コンセプト説明の時だけ、とても真剣で厳しい顔付きになっていたのが、とても印象的であった。
取材を終えて
イアン氏のコメントにあった通り、ローカの服はイージーでフリーである。淡い色使いと軽やかな素材感がとてもナチュラルでフェミニンであり、確かに、これにセクシーは明らかに似つかわしくない。イノセント、即ち少女的で純真であるということは、そのデザインや素材使いからも大いに伝わってくる。展示会場内でモデルがベンチに座ったり、立って歩き回ったり、モデル同士で会話していたり、と、奔放に振舞っているのもまた、少女的で純真であるということを連想させる。
以上のように、展示会のコンセプトとデザインや素材感及び展示会場の雰囲気や展示内容を連動させられる、という点では、ローカはとても完成度の高いブランドであると感じた。そして、あくまでもリアルクローズを意識している、ということにも、とても共感できる。結局、洋服は着られてこそ、であると筆者も思うからである。そういう意味で、個人的には親近感の湧きやすいブランドで、今回の展示会訪問により、今後を見守っていきたいブランドの 1つに加わったことは間違いない。
ともあれ、ディファレントでイノセントな洋服をお探しの方には、2006 S/S のローカをお薦めします。
(モデルの様子は右の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)