OBJETSTANDARD 2006 S/S コレクションレポート
取材に至るまでの経緯
2005年10月31日、東京・明治神宮外苑にて、オブジェスタンダール(OBJETSTANDARD)の 2006 S/S ショーが催された。このショーは、東京コレクション(日本ファッションウィーク)期間中に行われたものである。
今回は、日本ファッションウィークと銘打って、東京コレクションが新しくなる記念すべきシーズンであり、オブジェスタンダールは、ミントデザインズと共に、そのシーズンの開幕を飾るブランドとして、ショーを行った。
筆者は以前よりオブジェスタンダールの若林氏と面識があり、過去のショーにもお呼びいただいていたので、今回も、その縁を頼りに招待状を送付していただいた。そして、今回はショーを観た後にレポート記事も作成したいと考えていたので、若林氏にお願いして、記事作成を許可していただいた。
会場は聖徳記念絵画館前の中型特設テント「KURENAI」であり、11:00 からの開催が予定されていた。筆者は隣接する大型特設テント「TOKIWA」で行われたミントデザインズのショーを観た直後に会場前に到着し、ほどなく会場内に入ることができた。
会場内に入ると、既に来訪者の姿が見られる。開演まで十数分しかないので、席も概ね埋まりつつあるようだ。個人的に好きなブランドのショーだけに、開演が待ち遠しい。
結局、予定より15分ほど遅れてのショー開始となったが、会場内に入ってからそれほど経っていなかったので、時間は気にならなかった。
ショーの様子
オブジェルタンダールは毎シーズン、特にテーマを設定することはなく、デザイナー自らパリに行って仕入れてきた生地をもとにイメージしたアイテム作りをしているそうだ。そういうわけで、今回も特にテーマは設定されていない。ただし、今回のショーでは「大人のリゾート感覚」をイメージしたアイテムをいくつか作っているそうで、そのイメージを反映したスタイリングが散見された。
例えば、右写真のように、トップに水着を着た上で、コットン52%・アセテート48%の柔らかな質感と上品な光沢が美しいブラックのストライプのシャツを羽織り、ボトムスにはコットンワッフルのマリンパンツを合わせる、といったスタイルがそれである。マリンパンツの両脇の白いリボンが愛らしく、かつ、これによりウェストサイズを調節できるようになっており、相変わらず細かな配慮が行き届いたアイテム作りがなされていると感じた。
他にも、ビキニの上に直接ジャケットを羽織ったスタイル等、リゾート色のあるスタイリングがいくつか提案されていた。
(アイテムの様子は右の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)
筆者はショーに訪れた後に展示会にも訪れさせていただいたのだが、その際に印象に残ったのが、左写真にある、ラムレザーを用いたブラックのレザーキャミソールである。このアイテムは裏地がウールストレッチで、肌触りが良いように作られていて、ショーアイテムであるにもかかわらず、着心地まで配慮されている点に感心させられた。パターンもユニークで、前身頃が観音開きの状態になっており、右前身頃の上に左前身頃を重ね合わせた上で、ウエストの部分をテープ状になったレザーベルトで縛るようになっている。細いレザーによる縁取りもアクセントになっており、上質でハイセンスなアイテムとなっている。
尚、ボトムスのパンツは定番的なアイテムであるそうだ。全体として細身で美しいシルエットのスタイリングとなっている。
(アイテムの様子は左の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)
また、他に個人的に気になったアイテムは、右写真にある、ウエスト部分から後方に、巻きスカートのように生地が多めにとってある、ポリエステル100%のブラウンのタイトなスカートである。ウエスト前部の手の込んだパターンや、ポリエステルの持つ独特な張り感や光沢と相まって、シンプルでありながらもエレガントなシルエットとなっている。
トップスに合わせられているのは、ナイロン22%・ポリエステル78%のレースを用いた、ストライプ状になっている生地の透け感がとてもセクシーなカットソーである。エレガントで上品な印象のスカートとのコントラストが印象的なスタイリングである。
(アイテムの様子は右の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)
取材を終えて
他にも、鮮やかな花柄のプリントが映えるレーヨン50%・コットン50%のワンピース(画像をみる)や、同素材の色違いの生地を用いたパンツ(画像をみる)等、リゾート感覚溢れるポップなイメージのアイテムも登場。確かなテーラリングに裏打ちされたユニークさが新鮮であった。
いつも感じることであるが、オブジェスタンダールは、東京コレクションの中でも他とは気色の異なったブランドである。このブランドが発表するアイテムは、いつも決まってテーラード色の強いものばかりだ。余計な装飾は基本的に無い。昨今のロック隆盛、アミューズメント的なショー展開等とは一線を画しているのである。善し悪しや好き嫌いは別問題として、個性的なブランドであることは間違いないであろう。
また、アイテムに用いている生地も独自開発のものは基本的に無いそうで、あくまでも「作り」に拘る姿勢が強く伺える。
そういった無骨なまでの職人気質を、筆者はとても気に入っているのである。
ともあれ、とにもかくにも美しく、細かな点に拘りと手間の行き届いた、大人の女性向けのアイテムをお探しの方には、2006 S/S のオブジェスタンダールをお薦めします。
(フィナーレの様子は右の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)