KAMISHIMA CHINAMI 2007-2008 A/W 展示会レポート
日時: 3月19日(月)~ 3月22日(木)
会場: KAMISHIMA CHINAMI SHOW ROOM
今季のカミシマチナミのテーマは「ドライスノー(DRY SNOW)」。そのテーマに表れているように、冬の雪の持つ強さと美しさに加え、さらに乾燥したイメージを加味したアイテムが揃っていた。以下では、筆者が展示会で個人的に気になったアイテムについて紹介していきたい。
まず、1枚目写真は、レーヨン60%・サテン40%の背中や前身頃に沢山のタックを寄せたスモークグレーの製品染めロングジャケットに、シルバーのビスチェを合わせたスタイリングであるが、このビスチェは、驚くことに越前和紙でできている。これは越前和紙の若き職人達による渾身の作で、自動車の傷や凹みの修理等における板金の際に用いるメタリック加工まで施されているという、独特の風合いが個性的且つ大胆なアイテムである。
2枚目写真は、綿89%・麻11%のベージュ地に白の顔料プリントでスノーフラワープリントを施したロングジャケットであるが、目を詰めて織った綿の地に、綿麻を甘い密度で織ったものとで二重織りにすることで表面にポコポコした風合いを出し、その上に敢えてベタ塗りの顔料プリントを施すことで、基布とプリントの質感の違いによる面白さを追求したのだそうだ。尚、このプリントと同じ柄をモヘアの柄編みで再現した、アルパカ50%・毛50%の手編みのニットもあった(画像をみる)。
3枚目写真のレーヨン82%・シルク18%のベルベットを用いたボトルグリーンのワンピースは、パイル部分にレーヨンを試用したベルベット生地であるが、通常は基布にポリエステルを用いるところ、シルクを利用した贅沢な素材であり、これによりドレープ感が一層美しく表現されるようになっている。この生地はデザイナーが求めていた色合いと風合いを兼ね備えた初めてのベルベットで、今回、ようやく巡り合うことができ、導入に繋がったのだそうだ。肩部分のシルクの薄布も相俟って、今までのカミシマチナミには見られなかったような、よりフォーマルでドレッシーなアイテムに仕上がっている。
4枚目写真の10匁シルクジョーゼット素材を用いたウォルナッツブラウンのドレスは、ドレープ感と光沢感が美しく、ウエスト部分の細いリボンでキュートさを印象付けつつ、背中部分を大きくカットすることでセクシーなディテールとする等、アンバランスさがユニークなアイテムとなっている。また、襟刳りに縫い付けられたケープ状の生地を肩に纏うような作りになっているので、よりフェミニンなイメージになっているのが特徴的である。尚、首に巻かれたストールは、今季のテーマである乾燥した美のイメージを表現するため、心中にストーンブラスト加工を施し、光沢を消す等の細かな配慮が為されている。
5枚目写真のスーパーウール 100’s のチャコールグレーのヘリンボーンジャケットは、1つ1つ手作業でミシンを用いながら叩き付けたフリルのパーツがいくつも縫い付けられている。形状記憶のためのポリウレタン等は用いず、ウール100%でフリルを作ってしまうところに、このブランドならではの拘りが感じられた。
上記の他にも、綿の撚糸とカシミア撚糸ではなく、綿とカシミアの原料を混ぜて紡績した糸を用いた綿85%・カシミア15%のニットに、冬のイメージからレーヨン100%の糸を用いつつフクロウの模様編みを施した、様々な巻き方を楽しめる仕様のマスタードのストール(画像をみる)やウールの太い戸や綿杢の膨らみのある撚糸、アクリルのリング糸等の様々な糸を混ぜて織ったヘリンボーン柄のツイードのジャケットにタスマニアウールとカシミアとを混紡した糸を使用したカシミアメルトンのスカート(画像をみる)等、今回も趣向と技術を凝らしたアイテムが多く見られた。
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