ファショコン通信

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ブランド

「ブランド」の意味について

「ブランド物のバッグ」という単語は、世の女性たちのハートに相当の好意をもって直に飛び込むようである。プレゼントを贈らなければならない年中行事がある度に、世の男性たちのふところは悲鳴を上げることになるのは、もはや常識となってしまった。

しかし、よく考えてみると、例えば「マノロ・ブラニク(Manolo Blahnik)のハイヒール」や「エドワード・グリーン(EDWARD GREEN)のストレートチップ」や「バランタイン(BALLANTYNE)カシミヤ カーディガン」、「ヴァシュロンコンスタンタン(VACHERON CONSTANTIN)の腕時計」といったものと同じように、「ブランド物のバッグ」等というものがそもそも存在するわけではない。要するに、多くの場合は、「価格の高いバッグ」であるという一点においてのみ、その意味を有するにすぎない。デザイナーに対する共感や、そのブランドの高い技術や品質に対する信頼等は、ほとんどの場合は存在しないのである。
そこにあるのは、「ブランド物のバッグ」を持っているという虚栄心と自己満足だけであるといっても過言ではないであろう。

それでは、いわゆる「ブランド」というものは一体、どういうものなのであろうか。そもそも、「ブランド」という単語は多義的な単語であって、ひとくちに定義付けられるものではないが、大方、次のように考えられる。

ブランド」とはもともと、「商標、銘柄」を意味する。商標や銘柄を統一し、その中で品質やデザイン、イメージ等の独自性を強調し、他と差別化を図ることによって知名度を高める、というのが狙いである。商標登録をしてブランド名に法的保護を与えられているものと、そうでないものとがある。

70年代初期までは、ブランドは4つの機能を持つとされていた

  1. 出所表示
  2. 品質保証
  3. 広告
  4. 財産権

しかし、現在では他との差別化機能が特に意味を持つものとなっている。また、差別化には、商品郡としての差別化と、流通チャネルとしての差別化の2つの要素が含まれている。さらに、他社ブランドとの差別化だけでなく、自社の他ブランドとの差別化の要素も含まれている。

また、「ブランド」といっても多義的であり、様々な分類方法や形態がある。本稿では、「デザイナーズブランド」と「キャラクターズブランド」に分類して考察していきたい。

以下、この2種類について概観する。

「デザイナーズブランド」と「キャラクターズブランド」

「デザイナーズ・ブランド」とは、文字通り、デザイナー の個性を前面に打ち出したブランドのことである。「キャラクターズ・ブランド」とは、ある デザイナー の生前有していた名声を利用し、有能な デザイナー を中心に据えて、1つのコンセプトに基づいて服作りを進めるブランドのことである。

デザイナーズ・ブランド

デザイナー の個性を打ち出したもの。普及版であるセカンドラインに比べ、高級な素材や副素材が用いられ、価格も高い。ブランド名と デザイナー 名が一致することが多い。

具体例
ジョルジオアルマーニ(GIORGIO ARMANI)
ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)
アツシナカシマ(ATSUSHI NAKASHIMA)
etc.

キャラクターズ・ブランド

現在の デザイナー 名はブランド名として表に出さないが、その デザイナー の個性を活かしたもの。著名な デザイナー が手掛けていたブランドに多くみられる。

クリスチャン・ディオール
シャネル
グッチ
バーバリー

ただ、この分類も一般論であることに注意をしなければならない。クリスチャン・ディオールを例にとっていえば、クリスチャン・ディオールの生前は、このブランドも上の定義にあてはめれば「デザイナーズ・ブランド」であったのである。また、ジョルジオ・アルマーニを例にとっていえば、ジョルジオ・アルマーニが亡くなって、他の者が クリエイティヴ・ディレクター 等に就任すれば、上の定義でいう「キャラクターズ・ブランド」になるのである。

つまり、「キャラクターズ・ブランド」も、もとは「デザイナーズ・ブランド」であったのであり、他方、デザイナー が亡くなったあともブランドが存在し続けたりするのは、こういったことを背景としている。
また、あるブランドの普及版を「キャラクターズ・ブランド」と呼んだり、「ブルマリン(BLUMARINE)」や「ディースクエアード(DSQUARED2)」等のように デザイナー 名とブランド名が異なるものを「デザイナーズ・ブランド」と呼ぶこともあり、定義自体が曖昧であることにも注意を喚起したい。

尚、一般には、「キャラクターズ・ブランド」と「デザイナーズ・ブランド」を一絡げに「デザイナーズ・ブランド」と呼んでしまうようである。

結論にかえて

つまるところ、「ブランド」というのも様々なものがあって、誰かしらがデザインした何某かの服の総体がすなわち「ブランド」なのである。そして、何某かのブランドが、広くファンをもった有名なものであれば、やはり何かしら光る点があるもので、良品が多いことがしばしばなのである。
そして、かように考えると、ブランド選択にあたっては、そのデザイナーの表現手法やデザインスタイル、ひいてはデザイナー自身の行き方や考え方、容姿等にどれだけ魅力を覚えるか、という視点が最も大事であり、また、最もオーソドックスなブランドとの付き合い方なのではないだろうか。

他方、身体に身に付けて、それが外部から認識されるのが「服」なのであるから、そこには自ずから「主義・主張」が含まれる、とみられることも、否定のできないことであろう。その表現の手助けをしてくれるのが、すなわち「ブランド」なのであるともいえよう。